2018年1月28日
株式会社は厚生年金加入が義務になっています。
人を雇用していて、労働者の将来のための保障の厚生年金、雇用保険、労災保険に加入しないなんて、ブラック会社そのものでありえません。
ちなみに俊は、厚生年金、雇用保険、労災保険に加入してない会社で働いています。
2015年末に厚生年金に加入していない会社が80万社程度あったのですが、年金財政の悪化から、厚生年金に加入していない会社に対する対策が厳しくなっていて、少なくなりつつあるようです。
最初に「厚生年金保険・健康保険の加入について」という文書が届き、次に「厚生年保険・健康保険の加入状況の確認(回答)」というアンケートが届き、「来所通知書」、「立ち入り検査」、「強制加入」という経過をたどる事になります。
厚生年金保険法では、立ち入り検査を拒んだ場合6カ月以下の懲役か50万円以下の罰金を科すことができるとされています。
悪質な事業所と判断された場合や強制適用を執行された場合は最大2年遡って厚生年金加入を適用されることもあります。
でも、家族だけで運営している会社など、厚生年金に加入しない事について同情できる事例もあります。
家族だけで運営している会社で、収入が少なく、年齢も高く、やっと生活しているような会社でも、取引先から株式会社にしないと今後取引できないと通告され、泣く泣く株式会社にしたっていう例もあります。
株式会社にするだけで、税理士を利用しなくてはいけなくなって年額数十万円の経費がかかるようになります。その上、厚生年金に強制加入させられて、雇用保険・労災保険を含めて給与(収入)の30%程度の負担が生じます。
実際には、そのような事情の小さい会社なら全員役員なので、雇用保険の費用がかからなく(役員は雇用保険に入れない)、労災保険も負担しなくても良い(役員の場合は労災保険は任意)し、元々国民年金を負担していたので差額は30%も無いのですが、かなりの負担増になります。
しかも国民年金を40年分支払済の場合は、厚生年金のほとんどが死に金になります。その分貯金した方が何倍も有利になります。
本当に踏んだり蹴ったりです。
基本的には、どうしようもないのですが 、もし可能であれば株式会社をやめて個人事業者に戻るのが一番充当な対策ですが、先に事例のようにどうしても株式会社でいないと事業が続けられない場合には、役員を全員非常勤にするという裏技もあるようです。非常勤の役員は厚生年金に入らなくても良いのです。
ネットで調べると、代表取締役社長を非常勤の役員にするのもありなようです。
基本的には、役員だけの会社で、全員を非常勤の役員にすれば、その会社は厚生年金に加入しなくても大丈夫です。
全員を非常勤の役員にするという議事録を年金事務所に提出すれば、会社の登記簿の確認まではしなくて、厚生年金加入対象対策のリストから外れるようです。
ちなみに、会社の登記簿には常勤、非常勤の区別は記入されないので、登記簿を見ても何も確認できません。
役員報酬は決算途中に引き下げても、引き下げ前の報酬額が決算内に支払われたとして計算して課税されるので、非常勤役員にするのは一時的な対策として、決算時に役員報酬を下げるなり厚生年金を支払える給与体制にして、正式に厚生年金に加入する方が安心なのは確かです。生活がもっと苦しくなるのは仕方ないです。
厚生年金に加入していない会社が80万社近くあって、日本年金機構の担当職員の数からすると、そんなに早急には次の段階の処置には移れないと思うし、遡っての強制加入は悪質な事業所が対象という事ですが、なるべく早めに対応した方が良いです。
もし厚生年金に加入する事による収益減で事業を続けられなくなる場合は、1人以外を役員から外して、会社員にしたうえで雇用保険に加入し6か月後に倒産もしくは解雇扱いで退職させると、ハローワークで求職すれば、最長90日の失業保険が支給されます。
以前は株式会社には3人以上の役員が必要でしたが、現在は役員が1人でも大丈夫というように制度が変わったそうです。途中で役員の数を1人や2人にすることも可能なようです。
・定款に株式の譲渡制限の規定がない場合、規定を設ける
・「取締役会、監査役を置かない会社」に変更する
・必要に応じて定款の役員の員数等に関する規定も変更する
という手続きは必要です。
かなり慎重に調べたつもりですが、誤りがないとは断言できませんの、ご了承願います。
2019年11月2日
家族経営で厚生年金保険加入がどうしても無理な場合に、どのような対応ができるか改めて考えてみました。働いている家族全員が役員になっているのが前提で検討してみます。
国民年金40年分を支払い済みの場合は、厚生年金保険加入は国民年金分は無駄払いになります。これを避けるのが大前提です。
70歳になると厚生年金の加入が義務付けられていません。
国民年金加入が40年に満たない場合は、厚生年金から国民年金分を引いた差額分を給与を下げて対応するのが良いと思われます。厳密には労災保険、社会保険、雇用保険も関係してきます。
負担はきついですが、将来、年金として戻ってくるお金なので頑張りましょう。
雇用保険料率は本人負担が3/1,000で会社負担が6/1,000です。
労災保険料率は職種によって違いますが卸売業・小売業、飲食店だと賃金の総額の3/1,000です。
役員の場合は、途中で給与を下げても、1年間を通して最も高かった給与を払ったと仮定して法人税がかかってきますから、そのあたりは注意が必要です。
なお、社会保険料は4月から6月の給与を基に9月から翌8月の分が決められるという事も知っておいた方が良いです。
国民年金40年分を支払い済みの場合、非常勤の役員にしてしまうという選択があります。非常勤の役員は厚生年金に加入しなくても良いという事になっています。
国民年金40年分を満たすまでは厚生年金に加入して、40年を満たした時に非常勤になるという選択があります。
但し、株式会社で役員が全員非常勤というのはダメなようです。
会社設立上は役員が全員非常勤でも大丈夫ですが、社会保険上では、その会社の経営を実質行っている場合は加入させられる可能性が大きいそうです。
給与130万円以下の場合は社会保険の負担が不要なので、なるべく給与130万円以下に分散するという選択もあります。家族経営の場合のみにできる対応策です。
年収見込み額が130万円以上150万円以下の場合、社会保険に加入して保険料を徴収されると、実際の手取り額が130万円を下回ってしまう事も要チェックです。
介護保険の自己負担割合は本人の合計所得金額が160万円以上だと増えるので、高齢者を社員にする場合は、そのあたりも考慮した方が良いです。
厚生年金の保険料は健康保険料と厚生年金保険料を含めて、標準報酬月額・標準賞与額の18.3%です。
標準報酬月額というのは給与と各種手当も含まれた収入です。標準賞与額はボーナスです。
ちなみに国民年金は月額16,410円です。
国保の保険料は75歳未満は
医療分は平等割が1世帯22200円、均等割りが1人につき24000円、所得割が8.49%
後期高齢者医療支援分は平等割が1世帯7080円、均等割りが1人につき10200円、所得割が2.25%
75歳以上になると、国保だった人も社保だった人も、社保の妻だった人も関係なく1人1人に後期高齢者保険料がかかってきます。
例えば、60歳以下の会社員の人の妻が無職で60歳以下だと妻の分の社会保険の負担が無いのに、60歳以下の会社員の人の妻が75歳以上の無職だった場合には妻の分の負担(後期高齢者医療)が生じます。
介護保険料は40歳から64歳まで平等割が1世帯5520円、均等割りが1人につき5520円、所得割が2.15%
被扶養者にも同額かかります。
介護保険料も被扶養者分を含めて会社が半分負担します。
介護保険料は「満65歳に達したとき」は。所得によって決まり、65歳以上の被扶養者にも同額かかります。
厚生年金の保険料は厚生年金保険料(標準報酬月額・標準賞与額の18.3%)と全国健康保険協会管掌健康保険料(介護保険料含まないで9.98%)からなり、全国健康保険協会管掌健康保険料には医療分と後期高齢者医療支援分が含まれています。この金額は会社負担分も含まれるので、実際の社員負担額は、この半額です。
つまり、社会保険の標準報酬月額・標準賞与額の9.98%は国保の保険料の医療分と後期高齢者医療支援分が該当します。
例えば扶養者1人(妻)で240万円で比較すると、社会保険(介護保険料を除く、厚生年金を含む)の会社負担を含んだ総額は678720円
扶養者1人(妻)で240万円で国民年金だと国保で平等割(医療費と後期高齢者医療支援分の1世帯)29280円、均等割り(医療費と後期高齢者医療支援の2人分)68400円、所得割257760円、国民年金(2人分)393840円、
介護保険料を除く総額639600円
介護保険料を除く国保の場合、会社負担は無いので、2人の負担総額は総額639600円
介護保険料を除く社保の場合は会社負担が339360円、2人の負担総額も339360円
給与を年額30万円下げて社会保険に変更しても2人の実質収入は変わらないことになりますし、会社の負担増も2万円程度になります。
仮に240万円で本人と妻とで給与を分けて120万円ずつにわけると、社会保険の対象外になるので国保のままかなあと思っていたのですが、社会保険の加入条件は、2ヶ月を超える契約で正規職員の4分の3以上の労働時間ということなので給与の額で決めるわけではないようです。
通常の正規の職員の労働時間を40時間とすると、労働時間30時間未満だと国保で、労働時間30時間以上だと社会保険になるようです。
つまり、労働時間を調整することで、国保にするか社会保険にするか選べるようです。
ちなみに、60歳以上の夫婦がいるとします。夫婦ともに厚生年金の時期と国民年金の時期があり、2人とも学生時代に学生納付特例制度を利用したので年金払い込み480か月に達していない場合に、60歳を過ぎてから夫が厚生年金に加入した場合、夫は厚生年金に加入してから480か月に達するまでは経過的加算の対象になりますが、扶養家族である妻は、経過的加算に類似する恩恵は存在しません。
将来の年金の事を考えると、夫婦共に480か月に達していなくて夫が社会保険に加入する場合には、給与収入を夫婦2人で分けて、2人とも社会保険に加入した方が良いようです。
480か月に達した時点で、労働時間30時間未満にして扶養家族になるのが有利なようです。
ここで、給与を半分ずつに分けた場合、片方を税制的に扶養家族にできるかの検証も必要になるのですが、扶養家族の要件はその家族の収入が年間130万円未満(60歳以上は180万円未満)で、
その家族の年収は被保険者の年収の1/2未満であることとされています。
扶養家族の年収が被保険者の年収の1/2未満という部分に注意が必要です。