年金って複雑でわかりにくい制度で、理解している人は、ほとんどいないと思います。
その中でも経過的加算という制度は、ほとんど知られていないと思いますが、対象の人には重要な制度で知っているのと知らないのでは大きな違いがあります。
でも大切な事はネットを探しても調べることはできないので年金事務所で確認してきました。
おおまかには、経過的加算は年金の基礎部分(国民年金でも厚生年金にもあります)は20歳から60歳までの480か月の年金を払っている人には全く関係ない制度です。
以前は学生時期の年金の支払いは任意だったのです。その時の2年間は年金を払っていない人は結構いると思います。現在でも学生時代など無収入の場合に猶予制度を利用して支払っていない人もいると思います。
それらの人が60歳以降に厚生年金に加入している期間(20歳前に厚生年金に加入期間がある人も)は、480か月に満たない部分の補填がされるという制度です。
つまり、経過的加算は20歳から60歳までの480か月間に年金の未納期間がある人で60歳以降、もしくは20歳前に厚生年金に加入していた人にだけ関係のある制度です。
60才になると、通常は年金支払い480か月の条件を満たすのに、社会保険に加入の会社に勤める場合は70才までは厚生年金を支払い続けなければいけません。
厚生年金に支払うお金は、基礎年金部分と報酬比例部分を加えたものになります。
それは何才であろうと関係ありません。
報酬比例部分は何才であろうと関係なく受給する年金額に反映します。
でも基礎年金部分は、20才から60才までの480か月だけしか反映されません。
それ以外の期間に支払った基礎年金部分は、全く基礎年金額には反映しないのです。
20才から60才までの480か月に年金の未納がある人が、60才以降70歳未満もしくは20才以前に厚生年金加入の会社で働いた場合は、60才以降70歳未満もしくは20才以前に支払った厚生年金額の基礎年金部分は経過的加算として、480か月になるまで不足分が補填されます。基礎年金は増えませんが、その分は厚生年金の経過的加算として受給額が増えることになります。
ちなみに18才から社会保険のある会社に勤めていた人が、20才以降に結婚して国民健康保険(国民年金)になった場合、58才になって20才未満で働いた月数分だけ国民年金を不払いにしても、経過的加算がつくので、受け取る年金の受給額は、ほぼ同じになります。
厚生年金の報酬比例部分は、受け取る側としては、効率の悪い(リターンが少ない)部分です。
厚生年金には国の税金は投入されていません。加入者が支払った厚生年金の報酬比例部分は、実際に加入者が受け取る年金のほかに、厚生傷害保険、加入者の配偶者の年金保険料(サラリーマンや公務員など厚生年金に加入している人の配偶者の基礎年金分の年金保険料は負担無料で厚生年金加入者全員の負担で賄われます)、厚生年金の施設、厚生年金の運営費に使われます。
つまり加入者が支払った厚生年金の報酬比例部分で、受け取れる年金に使われる費用は一部でしかありません。
「厚生年金の施設、厚生年金の運営費については、どこまでが加入者の年金によって賄えるか、年金事務所で問い合わせしても明確な返事はありませんでした。」
国民年金や厚生年金の基礎年金部分は税金も投入さられていますので、ある意味とても効率の良いハイリターンな部分と言えます。もし国民年金や基礎年金部分に480か月に満たない人は、無理をしてでも追納なり任意加入なりをして満額にしておく事をお勧めします。
但し、若い人については将来的に年金自体がどうなるか不透明ですので、判断が難しいところです。
昨今、年金財政が厳しくなり、今まで経済的な理由で厚生年金に加入できなかった小さい規模の親族だけの株式会社にも、厚生年金に加入するように強い圧力を加えるようになってきました。
その場合、経過的加算も考慮に入れて対応するのが望ましいと思います。
給与の配分や給与の額を調整することで、従来より有利になる場合もあります。
60才以降で年金未納がある人が厚生年金に加入した場合の本人の経過的加算の扱いと配偶者が負担する年金保険料について
配偶者が60歳未満で報酬無し(もしくは報酬が130万円未満)の場合
本人の経過的加算は満額支給される 妻の基礎年金の負担が無料で加入状態になる
配偶者が60歳以上で報酬無し(もしくは報酬が130万円未満)で配偶者に年金未納期間がある場合もない場合も関係なく
本人の経過的加算は満額支給される 妻に対する配慮の制度は無い
つまり、妻が高年齢の場合は、何も配慮が無いという事です。
なお、厚生年金保険料(年金だけの負担料)は1年を通じた給与・賞与を12で割った報酬月額によって決まります。
報酬月額が93,000円未満の場合は標準報酬月額は88,000円、報酬月額が93,000円以上101,000未満は標準報酬月額が98,000円と段階的に決められています。
厚生年金保険料は標準報酬月額の18.3% ✖12です。この金額を本人と会社で折半します。
つまり報酬がどれだけ低くても下限があるという事です。計算すると、厚生年金保険料が国民年金保険料より低くなることは、ほとんど無いという事になります。
こうやって調べると、厚生年金って不公平な制度だと思います。
60才以上で年金を480か月完納している人は、年金保険料を割り引くなどの配慮があっても良いと思います。